2012/09/20

寂しききわみ


吾木香 すすきかるかや 秋くさの さびしききはみ 君におくらむ (若山牧水)
























ワレモコウ・・・吾亦紅、割木瓜、我毛香とも書きます。

暗紫紅の花穂。
愛らしい形容と、どこか哀愁を帯びた美しい響きに惹かれます。

秋の深まりと共に紅を濃くしてゆく吾亦紅は、
オミナエシやススキに添えると、不思議と存在感を増します。


若き牧水は、この歌を恋人園田小枝子にあてて詠みました。

花言葉は「愛慕」

両腕を広げたような独特の立ち姿で、
誰かの傍らに寄り添って
はじめて、そのひそやかな想いを放つのでしょうか。



2012/07/02

天の川

天の川 相向き立ちて 吾()が恋ひし 君来ますなり 紐解き設(ま)けな 
(山上憶良)






















梅雨の晴れ間を心待つのは、牽牛や織姫ならずともですね。
万葉集には天の川の歌が130首余り残されています。

恋しい人が来る川に向かい、そのまみえる時を想って
身を焦がしながら、衣を解いて待っている・・・・・

なんというおおらかで素直な愛情表現でしょう。

牽牛と織姫・・この天上の恋人たちの逢瀬を、現実の庶民のものとして詠った憶良は
社会派歌人として貧しい人たちに情を注ぎ、苦しい生活や家族の情愛を詠みました。

率直に想いを言葉にした古(いにしえ)の万葉人の姿は、わたしたちに
気持ちを伝えることの原点を示してくれている気がします。



2012/06/16

花いばら

 
 愁いつつ岡にのぼれば花いばら(与謝蕪村)


蕪村59歳の作品です。












あれこれと思い悩みながら歩いて行った道の彼方
小高い丘を登りきった目前に、一面広がった花いばら・・・。

色彩豊かでロマン溢れる情景が目に浮かびます。


決して裕福な境遇ではなかった蕪村は、なにげない日常の
ささやかな風物の中に「抒情」を写しとる画家でもありました。

齢還暦を迎えようと言う彼は、何をこころにこの句を詠んだのでしょう。
何度読んでも青年の心象風景のように鮮やかに映りこんできます。


若き日の彷徨いは、それはそれでやり切れぬ重さを伴なって
その身を覆うものですが、
年を重ね、確固として信じて来た自分が
ひとたび、社会的な居場所や存在感が感じられないと思う時、
それはうつろいにとどまらず、気がつくと焦燥感や不安となって
深淵へ向かう鉛蔓のように、からみつき侵食してくるのかもしれません。


こころが萎えたり傷ついたりすると、人はどうしても
自分が生きる意味や
生きる価値、そこに存在する理由を求めてしまいます。

幾つであっても、何ものであっても、
ひとは、そこに”ある”だけで、ただそれだけで素晴らしいのに。


明日、この雨があがったら、あぜ道を抜けて
あの小高い丘まで行ってみようかなって思います。




2012/05/14

母の日に想ったこと



昨日は母の日でしたね。

その母の日に、SIS顧問の吉川武彦氏による講演会を行いました。

演題は、「認知症高齢者介護と相談活動」
~個別的ケアと地域ケアの総合化をめざして




今回の吉川講師の講義内容は、ご自身の体験を通して
認知症の方への対応にスポットを当てたものとなっていましたが

認知症かどうかに関わらず
目の前にいる「その人」とどう向き合うかという課題について
深く考えさせられるものでした。

わたしは、ちゃんと向き合ってこれただろうか?
想いを受けとめていただろうか?

吉川氏のお話をうかがいながら、
逝ってしまった4人の親たちのことを想いました。


2012/03/27

自己肯定のためのエネルギー源

世界の蘭展にて

久しぶりのコメントです。
日付を見てあらためてびっくり。
昨年暮れに書いたままなんですよねぇ。

ブログを開いてはみるのですが、どうしても書き込むことができなくて
のらりくらりと、とうとう三ケ月も経ってしまいました。

昨年から今年にかけていろんな「喪失」を体験して
ずっと、からだのどこかに穴が空いているような気がしていました。

なかなか咲かない今年の桜のように、寒さと寂しさに
どこかが縮こまっていたのかもしれません。

先日、3月25日には「自己表現講座」を行いました。
一昨年から始めて、数えればもう20回です。

セミナーを終えた後は、2時間あまり運転して帰るのですが
ああすればよかった、こうもできたかも・・・とネガティブ雲が浮かんできます。

自分のために使える貴重な時間ではあっても、
向き合って共有してくれる人がいないので、けっこう孤独な道行きです。

先日、そんなふうに帰宅してパソコンを開いたら
受講して下さった方たちからのメールが飛び込んできて、
こころが、ゆさゆさっとなりました。

久しぶりにブログ書いてみようかな・・・って思いました。
わたしの「自己肯定」のためのエネルギー源かな。